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百合お手紙・百合フイルムとふりかえり

はじめに

去る2021年5月16日、第三十二回文学フリマ東京で「百合お手紙」と「百合フイルム」というたのしい企画をやりましたが、あんまり上手に宣伝できなかったのでここで供養します。

百合お手紙

ある少女が友人に宛てたお手紙を模したかわいい封筒セットです。小さな物語をやさしい香りに乗せてお届けします。
花・カフェ・宝くじ特設ページより

イントロ

発端は、瑞希の一言だった。

「千穂子ちゃん。本当はお里に帰らずお一人で過ごすのでしょう?」
「……私は、何をしたらいいかしら?」
「お外の写真が見たいの」
「百合お手紙」注文カードより

珱丘県長尾生市の鳩徳女学院では、明日から4つの生徒寮の1つである南天寮の改修工事が始まることになっていた。

相園千穂子と小野寺瑞希は、南天寮の202号室で同じ時間を過ごすルームメイトである。活動的な千穂子と内気な瑞希は、お互いに足りないところを支え合うパートナーとして信頼し合っていた。 病気 のせいでなかなか学院の外に出られない瑞希は、千穂子が語る街のこと、山のこと、海のことを熱心に聞きたがった。

大規模な改修工事が続くため、南天寮は明日から5日間昼夜を問わず立ち入りが禁じられる。その間、本来なら南天寮の全生徒が親元に戻って改修工事の完了を待つことになっていた。しかし、瑞希を含めた数人の生徒は実家に帰ることができないため、他の寮の空室を一時的に借りて早めのゴールデンウィークを過ごすことが決まっていた。

一時帰宅の対象である千穂子は、彼女の父が所有している迱里ヶ崎(茅川県下城市)の別荘で過ごすという旨を届け出ていたが、実際は家族と過ごすどころか別荘にさえ立ち寄らず、密かに予約した迱里ヶ崎の旅館に一人で滞在するつもりである。千穂子は誰にも言わずに出立の準備を進めていたが、その目論見を瑞希に見抜かれてしまったのだった。

瑞希としては、千穂子の嘘を先生に言い付けて彼女を貶めようとするつもりはなかったし、その思いは千穂子も分かっていた。言葉がなくても伝わるふたりの関係に甘えるように、瑞希は旅先で撮った写真を送るよう千穂子に頼み込むのだった。

彼女は、千穂子がファインダー越しに切り取るフィルム写真の質感をよく気に入っていたのだ。

タテの構造

百合お手紙は重層的で少し複雑な構造になっている。この構造を外から順に挙げていこう。

お買い上げシール

百合お手紙外装ウラ

ニチバン ST-C

  • 後述の外装と共に、あなたとお手紙の世界を絶縁する構造である。
  • お買い上げシールがお手紙の世界を封印する錠だとすれば、外装は我々の世界と繋がる扉といえる。
  • 黄色いテープに黒い猫と赤い文字を使った特徴的なパターンがあなたの目を引くはずだ。

外装

百合お手紙外装オモテ

塩素漂白をしていない 無漂白クッキングシート

  • お買い上げシールと共にお手紙を包む油紙(グラシン紙、パラフィン紙、薄葉紙)である。
  • 油紙はほんの少し透けていて、封筒に書き込まれた住所の一部を覗き見ることができる。
  • 第三者のお手紙を弱小サークルが持っているのはなぜか?という問いに答えを与える。

ライセンス表記

百合お手紙封筒ウラとライセンス表記オモテ

セブンイレブン マルチコピー機

  • ライセンス情報(裏)とハッシュタグ「#百合お手紙」(表)を表示した短冊である。
  • 他の構造とは異なり、事務上の表示すべき情報を簡素に記した異質な存在である。
  • このように、必須情報の記載が浮いて異質な存在となる現象を 必要性の逆転 という。

封筒

百合お手紙封筒オモテとライセンス表記ウラ

etranger di costarica ENY2-P-06

  • お手紙の世界を構成する最も外側の構造であり、手書きの宛先・切手・消印・差出人・封緘シールを含んでいる。
  • フラップはのり付けされているが、あなたに提供された時点で既に開封されており、なぜ文学フリマで他人のお手紙を頒布しているのか?という問いにストーリーを与える。
  • オモテ面が透けて見えるため、外装の一部を構成しているともいえる。
宛先・差出人

ぺんてる BLN75-A/BLN75Z-A/BLN75AW

  • 架空の郵便番号と住所を設定し、別荘地から学院に配達されるお手紙を再現した。
  • 別荘地: 269-4202 茅川県下城市迱里ヶ崎字神巻4429-36
  • 学院: 429-4215 珱丘県長尾生市東冶町白嘶堂7-1 鳩徳女学院 南天寮 202号室
  • ちなみに、「存在しない郵便番号」は作れるが「どこでもない郵便番号」は作れない1
切手

84円普通切手・ウメ

  • お手紙の世界に十分なリアリティを与えるため、本物の未使用切手を丁寧に貼付している。
  • 消印日から考えると82円普通切手を使わなければならなかったが、十分な数を入手できなかったため84円切手で代用した(展示用のサンプルには82円切手を使っている)。
消印

84円普通切手と消印

パプリ フリーサイズ印, シヤチハタ HGT-2-GR

  • 架空の地名「迱里ヶ崎」の郵便局の消印風のスタンプを制作した。
  • デザインは櫛形日付印ハト印(実際にはクラゲ印だが)を模している。
  • 消印の古びた質感を表現するため、あえて弔事用薄墨スタンプ台を用いて押印した。
封印・封緘シール

百合お手紙封筒ウラ

トンボ PT-WT, ダイソー デザインシール ラッコ

  • 実際に郵便物として配達されるべきお手紙のため、液体のりでしっかりと封をした。
  • さらに、千穂子が選んだ瑞希の気に入りそうなシールで封緘されている。
  • 受け取った瑞希が自身で封を切っているため、頒布開始時点から開封された状態で提供されている。

写真

ダイソー 写真プリント

百合お手紙写真

  • イントロで瑞希が千穂子に送るよう頼み込んだフィルム写真である。
  • 千穂子が迱里ヶ崎で大量に撮影した海と花の写真から、よく撮れた数枚を選び取って同封している。
  • もちろん、実際はフィルム風に加工した写真プリントだが、お手紙の世界に閉じ込めた時点でその事実は消失する。
  • 保護のため透明な袋に収納しているが、これは千穂子が付けたもの ではない

本文

etranger di costarica BASIS-27-02(またはクラックス WP50・E25), ぺんてる BLN75-A/BLN75Z-A/BLN75AW

百合お手紙本文

  • 最も内部の構造であり、手書きの本文を含む百合お手紙の本質的な構造である。
  • 千穂子が持っていたノートや便箋を使っているため、ほんのりと彼女の匂いが残っている。
  • お手紙の世界に閉じ込められることで、千穂子と瑞希の物語に強烈なリアリティを与える。

ヨコの構造

百合お手紙の世界は、千穂子が瑞希に宛てた全4通の封書で構成されている。あなたが注文した時点では、何通目のお手紙を入手できるかは分からない。いわゆるブラインド仕様である。

なぜ? 我々は、一山いくらで入手したお手紙を、その世界の外で売りさばく 古物商 だからだ。そこに物語を見いだすのはあなたの自由だが、我々はどのお手紙を手渡しているかを区別するほどその世界に 興味がない から、種類ごとに分けて選ばせる必要はないと思っている――

百合フイルム

35mmカラーネガフィルムを模したかわいいシートです。インテリア、しおり、現像、妄想などにお使いください。
花・カフェ・宝くじ特設ページより

概要

百合フイルムは、千穂子が撮影した写真のフィルムを3枚ずつカットしてスリーブに収めたものである。

百合お手紙は、日常生活で活用することを意図したものではない。引き出しにずっとしまっておいてもいいし、手紙の山に混ぜて放置してもいいが、少なくとも毎日読んだり壁に貼っておくものではない。百合お手紙の世界を壊れないように取り出して、気軽に使える実用性を与えたのが百合フイルムである。実用性――コルクボードに貼ったり、しおりとして使ったり、風景から撮影のシチュエーションを妄想したりするには十分な品質だが、現像については鮮明な像が得られないので注意しておくべきだ。

なぜリバーサルフィルムではないのか? 千穂子の気持ちになって考えてみよう。

タテの構造

基本的に百合お手紙の構造を模しているが、それほど複雑ではない。

お買い上げシール・外装

百合フイルム外装ウラ

ニチバン ST-C, 塩素漂白をしていない 無漂白クッキングシート

  • 百合お手紙を模したものであり、内側を概念的に保護するための構造ではない。
  • 単に運搬中にスリーブが傷つくことを避けるための包装である。

ライセンス表記

百合フイルムシートオモテとライセンス表記オモテ

セブンイレブン マルチコピー機

  • ライセンス情報(裏)とハッシュタグ「#百合フイルム」(表)を表示した短冊である。

スリーブ

百合フイルムシートウラとライセンス表記ウラ

ホーショー FP-061

  • 6カット用フィルムパックを半分に切ってシートを封入した。
  • 乳白色のシートが入っており、光に透かすとフィルム風シートが綺麗に輝く。
  • 壁に貼ったりしおりに加工する際に、シートが傷つくことを防ぐカバーとなる構造である。

フィルム風シート

百合フイルムシート

チェリトン OHPフィルムコピーサービス

  • 35mmカラーネガフィルムを模したオレンジ色のデザインとなっている。
  • 上部には「YURI」やバーコード風のパターンを含むプリントを施している。
  • 下部には「HENBI2」を表すパターンや赤色や緑色のラインを含むプリントを施している。
  • パーフォレーションの穿孔は予算と手間の問題で断念したため、透明なまま残っている。

ヨコの構造

百合お手紙の写真をフィルムに落とし込んだ作品という性質上、同様に全4種で構成されている。こちらもブラインド仕様で頒布したが、やはり百合お手紙に倣っただけでそうすべきストーリー上の要請はあまり強くない。

解説

この企画は、「エスの境界 戦前百合小説集34」から大いにインスピレーションを得て、2019年末葉~2020年初頭に着想されたが、第三十回文学フリマ東京の中止に伴っていったん凍結されたものである。当時、同封する写真を集めるための撮影旅行にも出かけた。

当初は「旅行先から女に絵はがきを出す気持ち悪い女の手紙」というコンセプトだったが、(オリジナルの印刷物だと感じさせずに)商品としての絵はがきを再現するのが難しいと判断し、フィルム写真を封書に同封するという現在の構造に落ち着いた。


さて、ここまで百合お手紙の構造の解説を読んでもなお、黄・黒・赤をあしらった俗っぽいお買い上げシールに眉を顰めている者は、百合お手紙の構造への理解が――あるいは、一般的な事物に対する読解力が足りないのかもしれない。

すぐに予想できるのは、外側についての批判であろう。百合お手紙がこんなに良い作品だとしても、こんなダサいシールを貼ったら台無しじゃないか!と思う者がいるかもしれないし、油紙の外装に対して同じようなことを感じる者もいるかもしれない。

おそらく彼らはこう言うだろう――もっと百合を感じさせる包みにすれば分かりやすいのに!と。しかし、このようにお手紙の世界と我々を隔てる外装がなければ、内側に広がる世界がブースに漏れ出てしまう。すなわち、千穂子と瑞希の物語が意図せず変態美少女ふぃろそふぃ。の文脈に取り込まれ、お手紙の世界の価値が低下する。この趣のない外装が、外側と内側を空間的かつ時間的に区切る重要な構造物であることは明らかだ。

外装は概要を示すべきであるという考え――これは一種の現代病なのかもしれない。タイトルが内容の要約になっている作品に慣れ親しみすぎて、外装と内容の乖離を忌むべき不協和と捉えているのだろう。

もちろん、彼らの言うとおりに百合お手紙を可愛いラッピングで包むこと自体は物理的には可能だが、もはやそれは内容物の延長であって外装とはいえない。開封した時点で役目を終えるはずのグッズを包む箱やブリスターを丁寧に保存していた経験は、あなたにもあるのではないか? すると、内装の一部が むき出し になった箱やブリスターを、さらに別の外装に包んで保存したくなるはずだ。それはまさに、単なる外装を内容物の延長として取り扱っているということに他ならない。

我々は、我々のコンテンツをむき出しのまま他人のドメインに売り渡すことに慣れすぎて、ひょっとすると外装の存在さえ煩わしくなっているのかもしれない。


あるいは、手書きの封書をベースに世界を構成すること自体を古い発想と称して(しかも、最悪の順序で!)批判する者もいるだろう。

――紙に手書きとかもう古いよ。LINEのスクショの方がリアルでは? Twitterでもみんなでおしゃべりできる時代なのに。ビデオチャットならもっと近くに感じられて満たされるね。直接会わないから感染症の心配もないし。画面越しで世界中の人と交流できる私たちって、対面じゃないと満足できないlaggardsより先進的だよね。行きずりのテレセックスなら健康的だし!

……本当に? もしそうなら、文学フリマなんてさっさと終わらせばいいのかもしれない(あるいは、評論フリマあたりに改名するか)。確かに、YouTubeを開けば「応援」と称して金が飛び交う行きずりのテレセックス・リアリティ・ショーが見られるし、VRChatで好きなアバターを使って リアルに触れ合う ことができるのだから、ここに誰かの考えた妄想の書き起こしなんて入り込む隙間はないだろう。そういう人間にとっては、もう誰にも そんなものを読んでいる時間はない のだ。


百合お手紙で重要なのは、本文を記した紙(ノートの切れ端あるいは便箋)にほんのり匂いが付けられているということである。

我々の書いた作品のほとんどは、あまねけ!や変態美少女ふぃろそふぃ。公式サイトでWebページやPDFファイルとして読むことができる。あなたが書籍用紙ナチュラルの匂いで興奮あるいは絶頂する体質ではない限りは、これで印刷版とほとんど変わらない体験を得ることができるだろう。

しかし、百合お手紙はそうではない。あまねけ!ではまだあなたに香りを届けられないし、外装を解いて百合お手紙の世界に、そして千穂子の香りに触れるという経験も与えられない。もちろん、ポジティブに言い換えれば、あなたは実物を入手しないと得られない体験を受け取ることができるのだ。

さらに、千穂子の手元を離れた手紙の匂いは少しずつ減っていく。一定期間が経過したら同じ香りで焚きしめ直すことはできるかもしれないが、やはり出し入れを繰り返すうちに少しずつ劣化していくだろう。匂いの減衰と共に価値が減っていくというのは、人為的に古ぼけていくWebページなどとは異なるもっと静かで無造作な現象である。

本当は、何もかも台無しになってしまう前にたくさんの人に読んでほしい。たぶん、手紙から何の香りもしなくなった頃に全てスキャンしてアーカイブするだろうけれど、それはもはや無意味な化石として放棄されるに違いない。

雑記

コロナ禍中の文フリはとにかく最悪で、基本的には知り合いかインターネット経由の集客しか期待できない。新刊なら5冊、多くても10冊くらいあれば足りる。というか、最近はどこでやってもそうなるだろう。

ブースの丁寧な飾り付けが全く来客数に寄与せず、インターネット・バズ・パワーだけがものを言うなら、物理開催にどんな意味があって、なぜわざわざ来場者が(もちろんコントロールされた の下で!)集まっているのかよく分からない。死とか殺すとか巨大な言葉で包んで白黒の綺麗な絵を貼り付けた同人小説が累計1000冊以上売れているそうだが、これも基本的にはツイッター・バズに振った戦略だろう。白黒の線で書かれた綺麗な絵が見たいだけなら、そのお金で吉富昭仁などの漫画を買うべきだと思うが。

カレー屋も見本誌コーナーも懇親会も存在しない文フリは、長居させない!探索させない!交流させない!が基本なので、サークル参加側としては旨味がほとんどない。どんなに良いPOPと良い表紙と良いグッズを用意しても、ほとんどの入場者はそもそも探索する気がないんだからどうしようもないのだ。サッと冷やかすだけなら、意地の悪そうなオタクくんが腕組みをしているブースよりも、コスプレ風味の女3人が座るブースの方が話してて楽しそうだと考えるのは想像に難くない。

もちろん、役に立つ――例えばウマ娘プリティダービーの攻略評論でも出せばたくさん注目してもらえるだろう。これらが文学といえるのかはよく分からないものの、評論やエッセイみたいな分野は文フリの中ではまだまだ伸びると思う。提供できる価値が分かりやすくて最高! 次回から評論をやろうかな。

ヘラヘラと「ほんのり百合っぽい雰囲気で~……」とか「百合文芸アンソロジー」とか言っとけば何かを説明した顔になれるジャンルのブースに座ってると、とにかく気が狂う。運よく気が狂わなくても、たぶんバランス感覚は狂う。百合って何ですか? おれってもうダメですか?


やはり、百合お手紙はコロナ禍中の企画としてはまだ難しすぎたのだろうか。この構造は、少なくとも異常なスピードで歩きながらブースを眺める異常者に読み解けないのは確かであり、もっとゆっくり回れるようになってから大々的に告知すべきだったのかもしれない。

――異常なスピードとは? 同人誌即売会では折りたたみの机をぐるりと細長く配置した「島」が複数配置されており、目的のブースに移動するにはたいてい(興味もない有象無象の!)島と島の間を通らなければならない。当然、見本誌を読む気すらないサークルが集まる島なら通路の真ん中(ランウェイ)をまっすぐ抜ければいいはずだが、ご丁寧に一方の島に寄って 異常なスピード で歩きながら展示に一通り目を通したふりをする異常者がいる。常人の視点に例えると、新幹線から見える景色のスピード感だと思ってもらえばよい。727の立て看板の1/100にも満たない小さなブースを一瞬眺めたところで、彼らがどんな有益な情報を受け取れるのかは全く想像できないが、きっと即売会で鍛えたよほどの速読力(ぢから)があるのだ――


さて、開催後に売れ残った在庫を整理していたが、本格的に押し入れがパンパンになってきた。そろそろ無心で印刷版を頒布するのは取りやめるべきフェーズに入ってきたようだ。無駄な紙は環境にも悪い。

百合お手紙は、わざわざ紙を使う意味を再考し、紙を最大限に活用する方法を模索するための実験的な取り組みでもあった。紙で作らなければならない作品はたくさんあるが、そのほとんどは単なる文章の外に価値を見いだしている(多くのオンデマンド同人誌印刷サービスは、そういう付加価値のない作品のためのものだ)。

そもそも、我々が印刷版を提供しているのはなぜだろうか? 我々にとっては定期的な発行イベント(しめきり)を打ち立てるため、読者にとっては「紙で読みたい」という希望がある はず だからだ。昔、ディスプレイは光のせいで疲れて読みにくいので紙の本を出してほしい、と言われたことがあった。なるほどそんな需要もあるか、と思いながらこれまで印刷版を提供し続けているが、そう主張した彼らは今でも印刷版を読み続けてくれているだろうか? もちろん、彼らがこれからも我々の印刷版を入手する保証があるわけではないし、我々がこれから先も印刷版を提供し続ける保証もない。誰かの需要を考えるというのは、少なくとも趣味の範囲では本質的にあまり意味のないことだ。

無駄な在庫を抱えるくらいなら、最低ロット20冊の印刷所を使うのをやめればいいのだろうが、(文伸印刷株式会社とCQB.JPの同人誌印刷・同人誌支援プロジェクトであるところの)コミックモールの使い勝手がよすぎてなかなかやめられない。進捗状況の報告が少なくて不安になるタイミングはあるが、最低限の連絡は来るので3回くらい使えば慣れるはずだ。あなたの卒業研究もおおよそそんな感じだったろう。

在庫を抱えたくないなら1冊ずつオンデマンド印刷できるサービスを使えばいい、と考える者もいるかもしれない。しかし、ものづくりがもっと楽しくなるグッズ制作サービスに頼って資本に与するくらいなら、我々はいくらでも在庫を抱えるし、印刷せずにPDFを出しておけばいいとさえ思っている。あれは印刷所公式価格からの値引きが過ぎる上に、そもそも値引いた後もあまり安くないのでほとんど意味がない。

おわりに

「百合お手紙」と「百合フイルム」というたのしいグッズを作ったので公式サイトで買ってください。500円や1000円が惜しければ送料のみで送るので、連絡先までDMなどをください。

新刊「花・カフェ・宝くじ」も買ってほしいですが、800円が惜しければPDF版をリクエストできます。こちらは関わっている人が多いので、印刷版を無料で送付することはできません。

それはそれとして、未だにコミックモールから「花・カフェ・宝くじ」の印刷代の請求が来ていない。これってトリビアになりませんか?5


  1. これについては別の記事にまとめる(追記: どこでもない郵便番号は存在しますか?にまとめました)。 

  2. 変態美少女ふぃろそふぃ。の公式略称であるところの「変美」のローマ字表記である。 

  3. https://booth.pm/ja/items/971223 

  4. 2020-09-22挿入: 現在は再編集・増補改訂版の普及版 エスの境界が刊行されている。 

  5. 追記: 2021/05/22にちゃんと請求が来ました。 

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